歪みの仕組み・種類と使い方

倍音とサステイン ・ 歪みの種類 ・ コンプとしての歪み ・ EQの前後 ・ 帯域を分ける ・ パラレル ・ リアンプ ・ よく使う歪み

歪みのリバーブ的な効果

歪ませると倍音が増えてエッジが立ち、サステイン(余韻)が伸びる。その結果、リバーブを足さなくても音に奥行きが出る。リバーブより自然に聴こえることも多い。

WAVEFORM波形
薄い線が元の波形、朱色が歪ませた波形。頭が平らに潰れる。
12345678
CLEAN歪ませる前
基音だけ。
12345678
CLIPPED歪ませた後
上下対称に潰すと、奇数次の倍音(3・5・7…)が増える。

歪みの種類

同じ「歪み」でも、波形の潰れ方で音の性格が変わる。下の図は、入力(横)に対して出力(縦)がどう変わるかを表したもの。点線は歪みのない状態。

INOUT
SOFT CLIPなだらかに潰れる
大きい音ほど少しずつ頭打ちになる。テープや真空管に近い。
INOUT
HARD CLIPある点でスパッと切れる
上限を超えた分がそのまま切られる。エッジが強く出る。
INOUT
ASYMMETRIC上下で潰れ方が違う
波形の上下が非対称になると、偶数次の倍音も出る。
テープなだらかに飽和する。高域が少し丸まり、アタックが落ち着いて、まとまりが出る。
真空管なだらかに歪み、上下非対称になりやすい。太さや温かさとして聴こえる。
トランジスタ/クリッパーある点から急に潰れる。エッジとザラつきが出て、前に出てくる。
ビットクラッシュ解像度やサンプルレートを落として崩す。デジタルらしい粗さ。

歪みはコンプでもある

歪みはピークを潰すので、結果的に音量の差が縮まり、密度が上がる。コンプレッサーをかけたのと近い効果がある。歪ませた後にさらにコンプをかけるときは、かけすぎに注意する。

EQは前か後か

  • 歪みの前のEQ:どの帯域を歪ませるかを決める。低域を削ってから歪ませると、濁りにくい。
  • 歪みの後のEQ:出てきた倍音を整える。耳に痛い高域をここで抑える。
  • 同じ帯域をいじっても、前と後では結果がまったく違う。

帯域を分けて歪ませる

低域はクリーンなまま残し、中高域だけを歪ませる。太さを保ったまま、輪郭と存在感だけを足せる。ベースや808で特に効く。

マルチバンドで歪ませられるプラグインなら1台で完結する。FabFilter Saturn 2は帯域ごとに歪みの種類と量を変えられるので、このやり方に向いている。

パラレルで混ぜる

原音に、歪ませたトラックを少しだけ混ぜる。輪郭と密度を足しながら、原音の質感は残せる。歪ませる側は思い切り潰して、混ぜる量で調整するとコントロールしやすい。

アンプを通すという発想

90年代のブリストル系(Massive Attack『Mezzanine』など)の荒れた質感は、古いギターアンプに通してレンジを狭め、歪ませて作られていたと言われる。

プラグインで思うように歪まないときは、一度アンプから鳴らしてマイクで録り直す(リアンプ)手もある。インターフェイスの出力をアンプの入力に合わせるため、リアンプボックスを挟む。

よく使う歪み

Soundtoys Decapitator5つのスタイルを切り替えられる。A:Ampex 350、E:Chandler/EMI TG、N:Neve 1057、T・P:Culture Vultureの三極管/五極管。Mixつまみでそのままパラレルにできる。
Overloud Gem Dopamineテープのノイズリダクションのエンコード回路(いわゆる「Dolby Aトリック」)を再現したエンハンサー。原音にある倍音を動的に持ち上げるので、エキサイターのような耳障りさが出にくい。
XLN Audio RC-20 Retro Color歪み・ノイズ・揺れ・デジタル劣化などを1台で重ねられる。古いサンプルのような質感に。
Pro Tools Lo-FiPro Tools付属。サンプルレートとビット数を落とすほか、ノイズ・ディストーション・サチュレーションも足せる。
Distressor本来はコンプ。Dist 2・Dist 3モードで倍音を足せる(Dist 2は偶数次寄り、Dist 3は奇数次寄り)。

※ プラグインもアナログ機材も、入力レベルで歪み量が変わる。ゲインの上げ下げそのものが音作りになる。